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3分で読めるショートエッセイ

散歩のテーマソング

犬にとって散歩は、一日の中で最も愛する事のうちのベスト3に入ると思う。

我が家のポン(パグ犬 ♀)は、ごはん、抱っこ、の次に散歩が好きである。

私は、普段、外出する時にノーメイクだったら必ず帽子をかぶる。

フルメイクの時は「世界で一番美しいのは、このわたくしよ・・・フッフッフ

みんな、わたくしにひざまづきなさい」くらいの高飛車なノリで道を歩くのだが、

ノーメイクの時は、たいていスポッリと帽子をかぶって、自分の存在を消そうとしてしまう小心者である。

散歩をする時間は特に決まっていないのだが、たいてい午前10時前後と夕方の2回である。

犬好きババアの異名を持つ私の母が時々、昼過ぎも連れ出すことがある。

気候のいい時の散歩はとても気持ちいいが、寒い日や暑い日はおっくうで死ぬほどめんどうくさい。

でも、ポンの

「散歩はまだか? 行く? もう行く?いつ行く?ほんまに連れてってくれるの?」の

つぶらな瞳訴え攻撃を受けてしまうと

「今日の散歩はヤメ~ッ」なんて事は絶対に言えない。

スッポリと帽子をかぶり、散歩にでかける。

歩き始めると、血のめぐりがよくなるのかテンションがあがってくる私である。

必然的に鼻歌を歌いたくなる。そして、ご機嫌な鼻歌がはじまる。

テンションはひたすらあがり続ける。結局、最後は陽気に歌いながら早足気味で歩く。
そして、ポンより私の方がノリノリになる。

おしっこ、うんちの始末と、曲は中断されるが、テンションはそう簡単に下がらない。

最近のヒット曲もよく、歌いながら歩く。

火曜日の散歩は、必ず、ドラマの主題歌を口ずさんでしまい、

土曜日の夕方はよしもと新喜劇の「燃えるエクスタシー」を

熱唱してしまう。無意識に歌ってしまうところがちょっと怖い・・・

散歩の間、一曲では足りないので何曲も歌うが、トリはいつも決まっている。

題名は知らないが、

♪Old Mcdonald had a farm E-I-E-I-O の歌である。

マクドナルドという名前のおじさんが農場を持っていて、

犬や、ネコ、あひる、羊やへびさんが農場のあっちこっちにいて

どこでもかしこでも、鳴きまっくているという内容の歌なのだが、どうも子供のころからついつい口ずさんでしまう。

私のテーマソングのようなものである。

散歩の時、最後にこのマクドナルドおじさんの歌を歌い始めるとポンが振り返って

「おっ!!パヤちゃん、もうおウチへ帰るんやね!よっしゃ帰るで~」っという目をして私と歩調をあわせて、家路を急いでるような感じがする。

やっぱり、私は犬バカである

私の夫

私の主人は、無口だ・・・

そして、愛想もくそもない。ひたすら黙っている。どんなに宴席が盛り上がっても、
桜が満開でも、クリスマスパーティーが盛り上がっても、20世紀最後の忘年会も21世紀最初の新年会も黙って座っている。

主人に慣れている人は、何も気にせず、無口な主人を無視して普通に楽しんでくれるが、初めて主人に会った人はそうはいかない。

必ず、主人のいないところで、「ご主人、怒ってるの?」と心配そうに聞いてくる。

「ううん、いつもあんなのだよ。ぜんぜん怒ってないよ。ただテンションが異常に低いだけだから、無視して楽しんで・・・」と答える。

仕事もまじめにこなし、家族も愛してくれて、趣味にいそしみ、自分自身の向上を計るため学校にも通っている普通のサラリーマンである。

ただ他の人と違うのが、無口で感情を全く表に出さないだけである。

私が、室内犬を飼いたいと言ったとき、彼は賛成も反対もせず「ふう~ん」っと愛想のない返事をしただけだった。

子犬が我が家にやってきて、家族みんながわーっと触りまくって、抱っこしまくっていても、彼は、だまって遠くから、子犬を見ていた。

「犬、好きじゃなかったっけ?」っと心配そうに聞いてみたら、

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好き。」とポツリといって、また趣味にいそしんでいる。

「本当に好きぃ~???」っと疑っていた私は、後日、彼の言葉に嘘はなかった事を知った。

そして、無口な彼の意外な一面を見てしまった。

その日、私はインフルエンザにやられており、子犬をひざに抱っこしながら、主人に作ってもらった鍋焼きうどんを食べ終え

「う~、あかん・・・死にそぉ~もう、寝る~」っと言いながら子犬を下ろして一人で寝室に入ろうとした。

そのとき、子犬が抱っこに満足できなかったのか、

「もっと、抱っこせぇやぁ~」っと言わんばかりに私のおしりにタックルしてきた。

「あかん、今日はもう寝かせて~」っと寝室に子犬を入れずにドアをしめてベッドに入ろうとしたら、

ガリガリと爪でドアを引っかく音・・・

「満足な抱っこしてくれるまでは、寝かせへんでぇ~」ってな勢いである。

主人が子犬を持ち上げて、台所に連れて行きパタンとドアの閉まる音がした時、私は、もう半分、気を失いかけていた。

何時間か眠った後、のどが渇いて、水を飲むため台所に入ろうとした時、私は聞いてしまった。

「よちよち、いい子ちゃんでちゅねぇ~」

「はい、ネンネちよ~ね~」

「いい子ちゃん、いい子ちゃんね~」

そして、目に入ったのが、

犬をあぐらの上に乗せ、犬のおなかをなでながら

「♪おなか、くるくるぅ~♪」と謎の歌を歌っている彼の姿だった。

友達の赤ちゃんを見に言った時、

「怖いから触れない」といった人が、子犬のおなかをなでながら

「♪おなか、くるくるぅ~♪」を連発している。

ありゃぁ~、見てはいけないものを見てしまったような気がして、わざと足音を立てて入っていくと

ぴたっと黙って、テレビを見てるふりをする。

次の日、彼の実家に電話して、この一件を話してみる。

お義母さんも、信じられないと驚いていた。

(ちなみにお義母さんは機関銃のように話す。)

犬嫌いでは、なかったっというか、かなりの犬好きと確信した私は、

それからは、思う存分、主人にも子犬のめんどうをみてもらうことにした。

私の前では決して、犬に話しかけたりしないが、誰もいないところでは犬と、気持ち悪いコミュニケーションはかりまくってるんだろうなっと思ってしまう。

主人が、「クッション!!」と言うと、子犬はクッションを探し回って、口にくわえて、トットットッと主人の所まで持っていく。

「毛布!!」っと言うと、自分のお気に入りの毛布を犬小屋から引っ張り出してきて

主人の前まで持っていく。そして小犬はおなかを見せて「くるくる~♪」をねだっている。

まったく、人はみかけによらないものである。

 

はじめての映画

今年のお盆休み、主人と一緒に、彼のお勧めの映画を観に行った。

残念ながら、私が期待していた内容とは少し違っていたせいか、途中で飽きてしまった。

主人の顔を覗き見ると彼も睡魔に襲われほとんど気を失いかけていた。

席を立つわけに行かず、そのまま座ってボーっとスクリーンを眺めながら昼食は何を食べるか思案していた。

ふと劇場内を見回すと観客に親子連れが多い。映画の宣伝では子供にもウケそうな感じだったからだと思う

しかし、実際の内容は大人向けで、少し抽象的だ

「こんなん子供が見てもつまんないだろうな~かわいそうに」っと思いながら今度はタイ料理のお店に入った時、何を注文するか考えていた。前売りまで買ってこの映画を楽しみにしていた主人は寝息をたてて眠っていた。

上映が終了して館内が明るくなり、そろそろ主人を起こそうかなと思った時、私の隣に座っていた小学生の男の子が大きな声で

「お父さん!!面白かったね~」と目をキラキラ輝かせながら興奮気味に父親に話しているのが聞こえた。

目をやると、その男の子は片手に食べかけのハンバーガーを持ったまま、目をキラキラ輝かせ興奮気味に

父親に話している。

「えっ?おもしろかったか?」お父さんはちょっと意外という顔をしていた。

「うん、面白かったよ。映画って面白いね」っと水野晴郎のような事を言って感動していた。

普段から映画を見ることに慣れてしまって、ちょっと見て、つまんな~いと決めつけ、映画の上映中に

お昼ご飯のことを考えている私とはエライ違いだ。だが、私も子供の頃は、初めて見た映画にとても感動した。

私が生まれて初めて観た映画は、題名は覚えていないがパニック映画で旅客機がジャングルに墜落し

幼い女の子が一人生き残こるというストーリーだった。死んでしまった乗客にウジ虫が涌いている傍らで、

少女は彼らの荷物から食料を見つけ出して生き延びていった。

パニック映画が盛んな頃でその中の一本を見たんだと思う。

幼稚園児の私にそんな映画を見せるなんて私の親もたいしたものだ。

初めて映画をみた私は、字幕の漢字が読めないのに、映像にストーリーに釘付けになっていた。

そして、もし自分の乗っている飛行機が落ちて遭難したら他の乗客の荷物をいただくんだと思った。

(とんでもないガキだ・・・)

ただ、その時のスクリーンを見つめる幼い私の目はあの男の子の様にキラキラ輝いていたと思う。

「いやぁ~映画って本当におもしろいですね」とキラキラ瞳で言ってみたいものである。

今、私がキラキラ瞳になるのは、

「奥さん必見!!本日、生鮮食料品がすべて30%引き」と書かれたチラシを見つけた時だな。

カニ食べ行こう

カニの季節である。

旅行社の前に並んでる温泉旅行のパンフレットには、どぉ~んとカニが表紙を飾っている。

そして、海の幸いっぱい温泉ツアーや、かに食べ尽くし温泉ツアー等の食をメインにしたパッケージツアーの案内がたくさん掲載されている。

温泉に行って来たと言う人に「温泉はどうでしたか?」と聞くとたいての人が料理の感想を話し始める。

例えば「あの価格の割には、いい料理だった」とか、

「料理はよかったけど、量が少なくて、夜中おなかがすいちゃったよ。」とかだ。

温泉の水質なんかを詳しく教えてくれる人は、めったにいない。

以前、カニ大好き夫婦の私達は、有名温泉カニづくしツアーに参加したことがある。

1泊2食カニ食べ放題プランだった。宿泊先での、夕食時、カニが出されて、いくらでも食べてよいというものだった。ただし、制限時間が90分である。もちろん、夕食はカニだけではない。

懐石風の日本料理がならび、カニが無くても、十分おなかは満腹になりそうだった。

料理も食べながら、お酒も飲みながら、カニも食べる・・・・なので、いくらカニ食べ放題といってもたいした量は食べられない。本当にカニだけの夕食だったら、大量のカニを食べられるだろうが、やっぱりそうあまくはない。

しかし、主人の目にはカニしかうつらない。私は、今まで、こんなにカニ好きな人を見たことがない。

もともと無口な彼ではあるが、普段は私の問いかけには、うなずいたり、答えてくれたりする。

しかしカニを目の前にすると彼は、周りの人の存在を忘れてしまう。

カニを食べ始めると、一切しゃべらず、一切人の話が聞こえなくなってしまうようだ。

沈黙にはじまり、沈黙に終わるのである。黙々とカニの足を丁寧に外し、パカっとこうらをはがす。

うっとりとした目でカニ味噌をみつめ、愛想で、私に「食べるか?」っというジェスチャーをして、

私が首を横に振るとうれしそうに、カニ味噌をたいらげる。そして、一本一本、足を丁寧に食べていく。

はさみとカニ専用のスプーンみたいなのを器用につかいこなし、それは見事にカニの身を外していく。

彼が食べた後のカニの殻は、身ひとつ残っておらず、全く、カニも本望だろうと思うくらいにきれいに食べ尽くされている。

そして、一匹食べ尽くしてしまうと、「おかわり!!」っと次のカニを迎える用意をする。

まるで、大食い選手権のノリである。制限時間があるというのが、彼の闘志を奮いたたせるみたいだが別に競争相手はいない、自分との戦いのようだ・・。

私は、一匹食べてしまうと、もう、食欲よりもカニの身をとる作業がめんどうで、イヤになってしまって、

飲む方か、他の料理を食べるほうに走ってしまう。

しかし、彼は、リズムをつかんでるのか、2匹、3匹と、どんどん食べすすんでいく。

右手にはさみ、左手にカニの足、パチン、パチンと、カニを切る音が響き、シザーハンズかと、つっこみを入れたくなる。

そして、制限時間いっぱいまでカニを食べ続けるのである。

旅行から帰ってきて、知人に、

「温泉はどうだった?」っと聞かれて

彼は「はさみがあんまりよく切れなくて手が痛かった」と言った。

気を失いそうになった。

今度、カニを食べに行くときは、是非、私がプレゼントしたカニ専用のハサミを持っていってもらいたいと思う

 

丸虫の思い出

丸虫(だんご虫)を見ると思い出す。

子供の頃、庭で見つけた丸虫(だんご虫)は、私にとって、とても愛すべき存在だった。

庭の大きな石を持ち上げると、丸虫(だんご虫)がモゾモゾ動いている。

手のひらにのせて、少し揺さぶると、丸くなってころころ転がる。

半日かかって集めた丸虫、片手一杯分・・・

今だったら、ぞっとする量だと思うが、子供の私は、達成感でいっぱいだった。

縁側にすわっていた、母の前に立ち、

「おかあさん、丸虫さんね、おうちで飼っていい??」

母、しばし、私の手の中を見つめたまま、絶句

私、「あのね、丸虫さんね、おうちで飼っていい??」

母、「う~ん、そうねぇ・・・・」

母の困惑した顔を見て、私の一言

「ねえ、いいでしょ?ちゃんと、丸虫さんの足ふくから・・・

私が母なら、「そういう問題とちゃうやろぉ~」っとつっこみをいれまくるが、

当時の母は,、なにやら私の納得いく返答をして、丸虫を私の手から庭へ

解放してやった。

私にも無邪気な時があったんだと、この間、丸虫を見つけたとき、

夫に私の丸虫話を聞かせたら、

丸虫と便所虫の違いを延々と説明された・・・

なんで???