sabbathcafe

3分で読めるショートエッセイ

はじめての映画

今年のお盆休み、主人と一緒に、彼のお勧めの映画を観に行った。

残念ながら、私が期待していた内容とは少し違っていたせいか、途中で飽きてしまった。

主人の顔を覗き見ると彼も睡魔に襲われほとんど気を失いかけていた。

席を立つわけに行かず、そのまま座ってボーっとスクリーンを眺めながら昼食は何を食べるか思案していた。

ふと劇場内を見回すと観客に親子連れが多い。映画の宣伝では子供にもウケそうな感じだったからだと思う

しかし、実際の内容は大人向けで、少し抽象的だ

「こんなん子供が見てもつまんないだろうな~かわいそうに」っと思いながら今度はタイ料理のお店に入った時、何を注文するか考えていた。前売りまで買ってこの映画を楽しみにしていた主人は寝息をたてて眠っていた。

上映が終了して館内が明るくなり、そろそろ主人を起こそうかなと思った時、私の隣に座っていた小学生の男の子が大きな声で

「お父さん!!面白かったね~」と目をキラキラ輝かせながら興奮気味に父親に話しているのが聞こえた。

目をやると、その男の子は片手に食べかけのハンバーガーを持ったまま、目をキラキラ輝かせ興奮気味に

父親に話している。

「えっ?おもしろかったか?」お父さんはちょっと意外という顔をしていた。

「うん、面白かったよ。映画って面白いね」っと水野晴郎のような事を言って感動していた。

普段から映画を見ることに慣れてしまって、ちょっと見て、つまんな~いと決めつけ、映画の上映中に

お昼ご飯のことを考えている私とはエライ違いだ。だが、私も子供の頃は、初めて見た映画にとても感動した。

私が生まれて初めて観た映画は、題名は覚えていないがパニック映画で旅客機がジャングルに墜落し

幼い女の子が一人生き残こるというストーリーだった。死んでしまった乗客にウジ虫が涌いている傍らで、

少女は彼らの荷物から食料を見つけ出して生き延びていった。

パニック映画が盛んな頃でその中の一本を見たんだと思う。

幼稚園児の私にそんな映画を見せるなんて私の親もたいしたものだ。

初めて映画をみた私は、字幕の漢字が読めないのに、映像にストーリーに釘付けになっていた。

そして、もし自分の乗っている飛行機が落ちて遭難したら他の乗客の荷物をいただくんだと思った。

(とんでもないガキだ・・・)

ただ、その時のスクリーンを見つめる幼い私の目はあの男の子の様にキラキラ輝いていたと思う。

「いやぁ~映画って本当におもしろいですね」とキラキラ瞳で言ってみたいものである。

今、私がキラキラ瞳になるのは、

「奥さん必見!!本日、生鮮食料品がすべて30%引き」と書かれたチラシを見つけた時だな。